現代の日本は、グローバル化、少子高齢化などによって多様な社会へと激しく変化しており、学校教育においても、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」をバランスよく育成することを通じて、これからの社会において「生きる力」をより一層育むことが重要になっています。
MOA美術館児童作品展は、「学習指導要領」にもとづき、子どもたちが自然・環境、社会、他者との関わりを通して、興味や関心をもったことを、感性を働かせながら絵画や書写によって表現することで情操を養い、豊かな心を育てることを目的に開催しています。
子どもたちの創作活動を奨励することは、夢や目標に向かって自ら考え、行動する力を高めると同時にそれぞれの国の伝統と文化への関心を高め国際文化交流に資するものと考えています。
本児童作品展は、全国の美育ボランティアによって支えられ、さまざまな個人、団体と協力しながら、医療福祉機関での巡回展示や、年間を通じた美育活動など、学校・家庭・地域が連携し、社会全体で子どもを育てていくことを重視するもので、このことによって、地域社会の絆を深め、心身ともに健康な活力のあるコミュニティづくりを願っています。
MOA美術館
開催期間 | 展 示 2024年12月27日~2025年2月12日 入賞入選300点と団体賞の展示紹介 於:MOA美術館1階 表彰式 2025年1月26日 於:能楽堂 |
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主催 | 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団(MOA美術館) |
後援 |
文部科学省 外務省 農林水産省 環境省 こども家庭庁 日本ユネスコ国内委員会 公益社団法人日本PTA全国協議会 公益社団法人全国子ども会連合会 公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 全国新聞社事業協議会 公益財団法人海外日系人協会 全国連合小学校長会 |
参加対象 | 海外11ヶ国25会場を含む289会場で開催.応募総数183,287点、参加校数5,574校 |
審査員 |
絵画の部 小林 恭代 文部科学省教科調査官 高根沢 景 こども家庭庁成育局参事官(事業調整担当)付児童環境づくり専門官 中原 一成 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室室長補佐 岡田 京子 東京家政大学教授 村上 尚徳 元環太平洋大学副学長 松永かおり 全国造形教育連盟委員長、世田谷区立砧南中学校校長 内田 篤呉 MOA美術館館長 書写の部 豊口 和士 文部科学省教科調査官、文教大学教授 大塚健太郎 文部科学省教科調査官 高根沢 景 こども家庭庁成育局参事官(事業調整担当)付児童環境づくり専門官 中原 一成 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室室長補佐 長野 秀章 東京学芸大学名誉教授 加藤 泰弘 東京学芸大学教授 𡈽上 智子 日本女子大学特任教授 荒井 利之 前全日本高等学校書道教育研究会会長 団体の部 豊口 和士 文部科学省教科調査官、文教大学教授 高根沢 景 こども家庭庁成育局参事官(事業調整担当)付児童環境づくり専門官 長野 秀章 東京学芸大学名誉教授 加藤 泰弘 東京学芸大学教授 岡田 京子 東京家政大学教授 中島 宏平 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団代表理事 内田 篤呉 MOA美術館館長 (順不同・敬称略) |
賞 |
絵画の部 内閣総理大臣賞 1点 文部科学大臣賞 1年~6年各1点 6点 外務大臣賞 3点 内閣府特命担当大臣賞 1点 農林水産大臣賞 1点 環境大臣賞 1点 日本PTA全国協議会会長賞 1点 全国子ども会連合会会長賞 1点 ボーイスカウト日本連盟理事長賞 1点 審査員賞 2点 MOA美術館特別奨励賞 1点 金 賞 4点 銀 賞 18点 銅 賞 30点 入 選 149点 書写の部 内閣総理大臣賞 1点 文部科学大臣賞 1年~6年各1点 6点 内閣府特命担当大臣賞 1点 農林水産大臣賞 1点 環境大臣賞 1点 日本PTA全国協議会会長賞 1点 全国子ども会連合会会長賞 1点 ボーイスカウト日本連盟理事長賞 1点 審査員賞 1点 金 賞 1点 銀 賞 5点 銅 賞 10点 入 選 50点 団体の部 文部科学大臣賞 学校奨励賞 6校 内閣府特命担当大臣賞 2児童作品展実行委員会 |
受賞された皆さんと、出品されたすべての児童の皆さんのご努力を心より讃えます。
今年度、書写の部では、国内・海外を合わせ、計51,470点の出品があり、皆さんの日頃の努力の成果が大いに発揮され、思いがあふれる素晴らしい作品ばかりでした。
書写を含めた書道や書は、生活文化として生活を支え、生活を彩り、生活の中で育まれてきました。その中で、日本独自の感性や価値観により、毛筆で書かれた文字や言葉に美が見出され、日本独自の芸術として発展し、芸術としての歴史と伝統が継承されてきました。小学生の皆さんは、書写・書道に触れてきた期間は短いですが、毛筆で文字や言葉を書く体験を通じて、文字を書くことの役割や価値、毛筆で文字を書くことによる美しさや豊かさ、魅力を、皆さんなりに実感的に感じ取っていることと思います。今後も日常生活の中で文字を書くことを大切にし、心豊かな生活を創造していってほしいと願っています。
審査に当たっては、筆使いや運筆、字形や字配り、紙面構成や作品としてのまとまりなどの他、こうした姿勢や思いもまた重要な観点となります。書写の学習を通して、日本の伝統や文化と向き合いながら、文字や言葉を書いて伝えることの意味や大切さを感じ取る感性を高めていってください。そして、書写の学習を通して、たくさんのことを考え、色々なことを学び、自身と向き合い、これからの人生を豊かにしていってほしいと思います。
文部科学省教科調査官 文教大学教授 豊口和士
佐藤 智義
【学校コメント】 本校は、青森県北東部に位置する、創立146年を迎える全校児童397名の学校です。
下北ジオパークにある釜臥山を仰ぎ、芦崎湾を望む豊かな自然環境にあって、地域の皆様の厚い信頼と協力をいただいて教育活動を進めて参りました。
この度の栄えある受賞を励みに、一層、豊かな心情と創造力の育成に取り組んで参ります。
【委員会コメント】 本州最北端に位置する、当児童作品展は今年で35回を迎え、この度は大変名誉ある「学校奨励賞」の受賞に、これまで支えてくださった関係者のみなさまに、心より感謝申し上げます。
今後も下北ジオパークの自然豊かな地形や特長を活かし、豊かな心が育まれる作品展を市と協働して進めてまいりたいと思います。
吉村 明美
【学校コメント】 本校は、石川県の能登半島中心部の穴水町に位置し、世界農業遺産にも認定された美しい里山里海に囲まれています。
この度の受賞は、震災からの復興に向けての大きな励みとなるものであり、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
今後も能登の復旧・復興と子ども達の笑顔があふれる学校づくりを目指して一層努力して参ります。
【委員会コメント】 穴水町では、昨年より、町長、教育長はじめ多くの方々のご理解をいただき、本年は地元高校生のボランティアもあり、町全体の教育に関わるものとなってきています。
地域全体が被災している中でも、多くの出展があり開催できました。
この受賞の喜びを復興に向かう力にしていきたいと願っています。
清水 ひとみ
【学校コメント】 本校は石川県能登半島の中央部に位置し、自然豊かな環境にあります。
校歌の中に「朝日を浴びて上る坂道 桜の庭に立つ校舎」とあるように、春には校舎全体が桜の花に包まれます。
今後も「笑顔いっぱい・やさしさいっぱい・元気いっぱい鹿島っ子」をめざす児童像とし、チーム鹿島小で取り組んで参ります。ありがとうございました。
【委員会コメント】 この度は名誉ある学校奨励賞を頂き、実行委員会皆で感謝しております。
鹿島小学校は毎年多くの作品を応募頂いており、中能登町は作品展の意図を深く理解頂けたことから共催になり、地域の皆様のご協力のおかげと喜んでおります。
今後とも子供達の健やかな成長を願い継続させて頂きたいと思います。
大島 尋隆
【学校コメント】 本校は、熱海市の伊豆山神社に隣接する創立72年目を迎えた小学校です。
この度は、栄えある賞をいただき大変うれしく思います。日頃より伊豆山の子どもたちを支えていただいている保護者、地域、関係者の皆様に心より感謝いたします。
これからも地域のシンボルとして、温かい学校づくりに努めて参ります。
【委員会コメント】 3年前の7月3日、この地域は予期せぬ土石流災害にみまわれました。今年、展示会場であった「PTAまつり」がようやく復活し、地域の方々は久しぶりに出展作品の鑑賞などを色々楽しみました。終了後、「学校奨励賞」受賞のニュースが入り二重の大きな喜びとなりました。
受賞を地域全体の喜びとし、これからも歩んでまいります。
宮瀧 秀一郎
【学校コメント】 本校は大阪府南部の貝塚市にある本年度開校した義務教育学校です。開校と同時にこのような栄誉ある賞をいただき感謝しています。
本校は二色学園型STEAMS教育を柱に新しい教育を研究開発しており、このたびA(ART 芸術)の部分でも認めていただいたことは、これからの教育活動に弾みがつくと喜んでいます。
今後も豊かな心を育む学校づくりに努力してまいります。
【委員会コメント】 受賞の報告に感動と感謝でいっぱいです。貝塚児童作品展実行委員会は、実行委員長を中心にNPO法人えーる、貝塚子育てネットワークの会と連携して活動しております。当委員会は「地域の居場所づくり」として子ども食堂の開催、瑞泉郷の農業体験を通して子どもの食育活動に取り組んでいます。
今後も美育、食育活動を通して健康なまちづくりに努めてまいります。
中尾 勝則
【学校コメント】 本校は、奈良県北西部の北葛城郡広陵町に位置し、令和5年度には創立150周年を迎えた歴史ある学校です。
今回、この栄えある賞をいただき、関係者の皆様には心より感謝申し上げます。この賞を励みに、「強く 正しく 美しく」の校訓のもと、より一層の教育活動の推進に努めてまいります。
【委員会コメント】 この度は「学校奨励賞」をいただき、驚きと感謝で一杯です。29年前には実行委員会メンバーが知り合いに声をかけながら作品を集めていましたが、今では行政・学校のご協力のもと、町内5つの小学校から数多くの児童の応募をいただき開催しております。
今後も美を通して心豊かな町づくりに貢献していきたいと思っています。
【団体賞コメント】 この度は、名誉ある賞をいただき、関係者一同大変嬉しく思い、心より感謝申し上げます。小矢部市は、県の西側の玄関口として石川県との県境に位置しており、境にある「倶利伽羅峠」は、平安時代末期に木曽義仲が戦った源平合戦の舞台であります。
さて、市内全5校から応募いただいている作品展は、小矢部市、教育委員会と共催で行い、地元の高校生、教師がボランティアとして参画してくれました。表彰式では、本物に触れてほしいと企画した「MOA美術館、箱根美術館見学バスツアー」の呼びかけを行ったり、入場者アンケートを取ったりしています。そして市役所や病院への移動展をして、その声を教育委員会や学校に返す事で、市民の作品展となるように願っています。
今年は能登半島地震がありましたが、避難所で花によるケアにも協力させていただきました。これも10年前から介護施設にお茶やお花をすることで、皆さんが癒される姿を見ているから出来た事だと思います。
関わる全ての方が笑顔になり、幸せになってもらえることを願いに、今回の受賞を励みにして、一層努力してまいりたいと思います。
【団体賞コメント】 この度は大変名誉ある賞を頂き関係者一同感謝申し上げます。
当会場は九州最大の人口を有する福岡市を含む6市6町で成り立っています。皆で一丸となって、本審査、展示を始め事前審査・地域展・WEB応募等を通して様々な団体や個人、保護者との関係が持てるようになり、本当の意味での顔の見える作品展となっていき、さらには美育活動にも繋がりこつこつと積み上げてきました。本年はこの活動が認められ県社協会長より表彰されました。
これからも社会全体で子どもを育て、他者に対する思いやりの心を育むことを願いより一層力合わせて取り組んでまいります。
絵画の部 総評
表現には、文字や言葉による表現、歌や演奏などの音楽表現、ダンスなどの身体表現、形や色などによる美術表現があります。
それぞれの表現にはそれぞれのよさがありますが、絵などの美術表現は見えないものを可視化するという特性があり、感じたことや考えたことを時間をかけて試行錯誤しながら作品に表していくことができます。そこには新たな気付きがあったり、考えを深めたり、創意工夫したりするプロセスがあり、そのため学校教育の図画工作科や美術科においては完成作品だけでなく製作の過程が重視されています。
このコンクールの審査では、作者の皆さんが何を感じ取り何を考えどのように工夫して描いたかというプロセスを大切にし、絵だけでなく題名や作者の説明文を見ながら作者の思いや意図、表現の工夫などを読み取るように心がけています。
審査会では技術的に優れたものだけでなく、一見何が描いてあるか分かりにくいけれど、なぜか心がひかれる作品にも出会います。そのとき題名や説明文などを見ると、「なるほど」と納得がいったり、「そうだったのか」と驚かされたりすることが多くあります。人の心を動かす絵には作者が何を描きたいかという思いがしっかりと込められており、今回賞に入った作品を見ると、どれも自分の着眼点でとらえ自分の表現方法で真剣に描いている姿が伝わってくる作品でした。学校教育でなぜ絵を描くのかを考えると、描くことを通してこのような感性や創造性を働かせる時間を過ごすことが重要ではないでしょうか。
MOA美術館全国児童作品展は、このような子供たちが絵を描くプロセスを通して、普段とは違った視点から生活や身の回りのものを見直したり、様々なことに気付いたり、考えたり、自分のことを振り返ったりすることを大切にしています。今後とも、このコンクールが、子供たちの感性や創造性、豊かな情操などを育成することにつながってくれることを願っています。
元環太平洋大学副学長 村上尚徳