現代の日本は、グローバル化、少子高齢化などによって多様な社会へと激しく変化しており、学校教育においても、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」をバランスよく育成することを通じて、これからの社会において「生きる力」をより一層育むことが重要になっています。
MOA美術館児童作品展は,「学習指導要領」にもとづき、子どもたちが自然・環境、社会、他者との関わりを通して、興味や関心をもったことを、感性を働かせながら絵画や書写によって表現することで情操を養い、豊かな心を育てることを目的に開催しています。
子どもたちの創作活動を奨励することは、夢や目標に向かって自ら考え、行動する力を高めると同時にそれぞれの国の伝統と文化への関心を高め国際文化交流に資するものと考えています。
本児童作品展は、2万人を超える全国の美育ボランティアによって支えられ、さまざまな個人、団体と協力しながら、医療福祉機関での巡回展示や、年間を通じた美育活動など、学校・家庭・地域が連携し、社会全体で子どもを育ていくことを重視するもので、このことによって、地域社会の絆を深め、心身ともに健康な活力のあるコミュニティづくりを願っています。
第30回となる今年度は、海外11ヶ国31会場を含む418会場で開催し、応募総数456,646点、参加校数9,431校となりました。このたび、各会場の最優秀作品から厳正な審査によって個人賞ならびに団体賞を選出し、全国展を開催します。子どもたちの多様な個性・能力によって制作された創造性やチャレンジ精神あふれる作品を是非ご鑑賞ください。
本展の開催にあたり、ご協力賜りました関係各位に深く感謝を申し上げるとともに、今後も未来に羽ばたく子どもたちに夢と希望を与えられる児童作品展としてご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
MOA美術館
開催期間 | 展 示 平成31年1月12日(土)から2月13日(水)まで 入選作品300点を展示 於:円形ホール 表彰式 平成31年1月27日(日)午前10時より 於 :館内能楽堂堂 |
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主催 | 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団(MOA美術館) |
後援 |
文部科学省 外務省 厚生労働省 農林水産省 環境省 日本ユネスコ国内委員会 公益社団法人日本PTA全国協議会 公益社団法人全国子ども会連合会 公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 全国新聞社事業協議会 公益財団法人海外日系人協会 全国連合小学校長会 |
参加対象 | 応募総数456,646点、参加校数9,431校、会場数418会場における「MOA美術館奨励賞」の作品の中から入賞・入選300点を展示 |
審査員 |
絵画の部 岡田 京子 文部科学省教科調査官 依田 秀任 厚生労働省子ども家庭局子育て支援課児童環境づくり専門官 井對 真也 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室利用推進・自然教育係長 遠藤 友麗 聖徳大学生涯学習課講師、公益財団法人岡田茂吉美術文化財団 村上 尚徳 環太平洋大学副学長 成田 慎司 旭川市立明星中学校教諭 佐々木 彰子 秋田県造形教育研究会顧問 加藤 修 千葉大学教育学部教授 山本 正美 前石川県志賀町立志賀小学校前校長 澤 直木 静岡市教育センター指導主事 森谷 連 自由美術協会会員 土井 久幸 日本美術家連盟会員、和歌山県美術家協会理事 長岡 利生 呉市教育会会長、元呉市小学校図画工作部会会長 木下 伸弘 長崎県美術協会会長 神山 泰治 琉球大学名誉教授 齋藤 泰彦 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団業務執行理事 書写の部 豊口 和士 文部科学省教科調査官、文教大学教授 依田 秀任 厚生労働省子ども家庭局子育て支援課児童環境づくり専門官 井對 真也 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室利用推進・自然教育係長 長野 秀章 東京学芸大学名誉教授 加藤 泰弘 東京学芸大学教授 高橋 順一 川崎市小学校初任者研修担当 五島 美孝 元名古屋書写教育研究会会長 藤井 義秀 奈良県教育委員会事務局学校教育課指導主事 団体の部 岡田 京子 文部科学省教科調査官 豊口 和士 文部科学省教科調査官、文教大学教授 依田 秀任 厚生労働省子ども家庭局子育て支援課児童環境づくり専門官 遠藤 友麗 聖徳大学生涯学習課講師、公益財団法人岡田茂吉美術文化財団理事 長野 秀章 東京学芸大学名誉教授 齋藤 泰彦 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団業務執行理事 (順不同・敬称略) |
賞 |
絵画の部 内閣総理大臣賞 1点 文部科学大臣賞 6点 外務大臣賞 3点 厚生労働大臣賞 1点 農林水産大臣賞 1点 環境大臣賞 1点 日本PTA全国協議会会長賞 1点 全国子ども会連合会会長賞 1点 ボーイスカウト日本連盟理事長賞 1点 審査員賞 1点 金 賞 5点 銀 賞 18点 銅 賞 30点 入 選 150点 書写の部 内閣総理大臣賞 1点 文部科学大臣賞 6点 厚生労働大臣賞 1点 農林水産大臣賞 1点 環境大臣賞 1点 日本PTA全国協議会会長賞 1点 全国子ども会連合会会長賞 1点 ボーイスカウト日本連盟理事長賞 1点 審査員賞 1点 金 賞 1点 銀 賞 5点 銅 賞 10点 入 選 50点 団体の部 文部科学大臣賞学校奨励賞6校 厚生労働大臣賞2児童作品展実行委員会 |
まずは、受賞された皆さんにお祝い申し上げます。そして、出品されたすべての児童の皆さんの出品に向けてのご努力を心より讃えたいと思います。
MOA美術館全国児童作品展は、今回で第30回展を迎え、その歴史に加え、書写の部では海外からの出品も含め144,511点が出品される、国内屈指の最大規模の作品展です。
文字を書くことは、それ自体が文化です。独特の機能をもった筆記具である毛筆が生まれ、毛筆による独自の表現は中国を中心とした東アジア地域で大いに発達し、特に日本では日本独自の美の世界を展開してきました。文字そのものがもつ力や美はもちろんのこと、文字や言葉に思いを込めたり、文字や言葉に込められた思いを感じ取ったりすることもまた、文化なのです。皆さんの感想文からは、文字や言葉と向き合う中で自分自身とも向き合っている様子や姿勢が強く読み取れ、また、どう表現しどう伝えたいかを工夫し、一所懸命に取り組んでいる姿勢や思いが、作品から伝わってきました。
審査に当たっては、筆使いや運筆、字形や字配り、紙面構成や作品としてのまとまりなどの他、こうした姿勢や思いもまた重要な観点となります。書写の活動を通じて、皆さんなりに日本の文化と向き合い、親しんでください。文字や言葉を書くこと、文字や言葉で伝えることの意味や大切さを感じ取る感性を高めていってください。そして、たくさんのことを考え、色々なことを学んでもらえたら嬉しく思います。
このたび参加されたすべての児童の皆さんの出品に当たりまして、ご指導に当たられた学校や地域の先生方、ご家族の皆様には、並々ならぬご協力・ご支援を賜ったことと存じます。心より御礼申し上げるとともに、今後とも学校・家庭・地域が一体となった支援体制の充実にご助力くださいますようお願い申し上げます。
文部科学省教科調査官 豊口 和士
山本 良子
【学校コメント】本校は,函館市の東部に位置し,昭和46年に開校した児童数241名の学校です。全校写生展や歌声集会等,子どもの表現する力を高め,豊かな心で学び合う教育活動に取り組んでおります。この度の栄えある賞をいただいたことを励みに,今後とも保護者や地域社会と力を合わせ,心ふれ合い瞳かがやく学校を目指してまいります。
【委員会コメント】この度の受賞は、南本通小学校に次ぐ、2校目の「学校奨励賞」受賞となり、実行委員会として大きな喜びと励みになりました。深堀小学校は、長年にわたり、美育に取り組んでおられ、素晴らしい作品を数多く出展いただき、作品展を支えていただいてきました。本年、函館市・函館市教育委員会との共催で、歴代奨励賞作品を展示した「30周年記念特別展」を開催しましたが、三分の一以上、深堀小児童の作品です。この特別展や医療機関の展示でも、「力強くて、美しく感動した」「癒された」等、喜びの声が寄せられました。これからも美を通しての、心身共に健康なまちづくりに一層努力してまいります。
中村 智彦
【学校コメント】本校は、ストーブ列車でおなじみの津軽鉄道の終着駅のそばにある全校児童145名の学校です。今回、栄えある賞をいただいたことは、学校はもとより、地域にとりましても大きな喜びとなりました。この喜びを学校や地域の宝物として、これからも「ふるさとの宝」である子供たちを育てていきたいと思っております。
【委員会コメント】この度は、中里小学校に栄えある「学校奨励賞」をいただき、学校・関係者・実行委員会共に感動に包まれています。ありがとうございます。この作品展は、文化面での活躍を認めていただける町の貴重な行事の一つとなっていて、行政や各団体からの応援で実施されています。平成の町村合併や学校の統合により16校から4校に減ってしまいましたが、ボランティアや他団体の協力も得て、出品作品は全て展示するようにしています。これからも美育を通じ、心身ともに健康な町づくりに努力してまいります。
北村 厚史
【学校コメント】本校は、岐阜県南西部に位置する全校児童770名の学校です。20年以上にわたり英語教育や国際理解教育に力を入れてきました。今回、栄えある賞をいただき、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。これを励みに、家庭や地域と連携して、児童が夢をもって「なかよく・かしこく・たくましく」成長できるように一層努めてまいります。
【委員会コメント】今年は第30回の節目の年、また大垣市の市制100周年の記念すべき年になります。さらに平成最後の児童作品展において、この度は「学校奨励賞」という素晴らしい賞をいただくことができました。小学校や市の教育委員会の喜びはもとより、私たち実行委員会にとりましても大きな喜びと感動をいただき、大変励みとなりました。中川小学校には、近隣に住む実行委員が児童の皆さんの美意識を高め、心豊かな生活を送っていただくことを願いに、花の活け込みに行かせていただいています。今後もこのような営みが学校に少しでも良い影響を及ぼすことになればと願っています。これからも、地域や学校と連携して「生きる力」を育む児童作品展を継続して行きたいと思います。
矢尾 正則
【学校コメント】本校は奈良県大和郡山市にある「郡山城」に近く、城下町の面影を残す地域と奈良市に至る住宅地が校区となっている創立47年目の学校です。絵画や工作、音楽などに興味を示す児童も多く、この栄えある賞に選考いただいたことに喜ぶ姿を見て、子ども達の感性を磨く環境づくりに一層努めたいと感じているところです。
【委員会コメント】大和郡山市児童作品展は、市内全11小学校が参加し、毎年継続して開催しています。この度は郡山北小学校が学校奨励賞という素晴らしい賞を受賞され、私達の大きな喜びと励みとなりました。作品展に対し、郡山北小学校の先生方から深いご理解とご協力を頂いており、開催当初より毎年多くの作品を応募していただいております。今回の受賞を機会に、さらに学校、家庭、地域と一体となって、美を通して子ども達に「生きる力」を育み、心豊かな心身ともに健康な人、まちづくりに努力してまいります。
山田 幸治
【学校コメント】本校は,広島県の南西部に位置する呉市の最高峰「野呂山」と瀬戸の島々が眺望できる豊かな自然に囲まれた,全校児童348名の学校です。今回の受賞は,学校・家庭・地域が一体となって,伝統的に盛んな書道等,情操教育に取り組んできた成果であると喜んでおります。この賞を励みに,児童の感性をより一層磨いて参ります。
【委員会コメント】今年は西日本豪雨により甚大な被害を受け、作品展が出来るか心配されましたが、傷ついた心を癒す「心の復興」としての作品展にしたいとの願いで、全員が心一つに取り組みました。今回、川尻小学校が文部科学大臣賞を受賞したことは、市長さん、教育長さん初め、実行委員会にとっても大きな喜びと励みになりました。
小西 憲一
【学校コメント】写真は本校が100周年を迎えたときに,保護者と子供が校舎に巨大リボンをかけ,学校への感謝の気持ちを表したものです。毎年,本校の子供たちの作品が市民の心を和ませたり,また,子供病院に作品を寄贈して入院している子供の心を癒やしたりしていると聞き感激です。学校や地域を愛せる子供と保護者に感謝です。
【委員会コメント】この度は、このような素晴らしい賞を頂き、校長先生ともども、喜びと感動を分かち合っています。多くの入賞作品を寄贈頂き、それらが病院に展示され、多くの人を勇気づけている事が受賞の要因とお聞きし、今後、より一層学校や家庭と連携して、地域に貢献していきたいと願っております。
【団体賞コメント】この度は名誉ある賞を頂き実行委員会一同心より感謝申し上げます。恵庭児童作品展をまちづくりの軸とし、美育を中心に様々な活動が作品展に繋がるよう意識し積み上げてきました。10年前より恵庭市の協働事業に「美育を通してこどもの生きる力を育む事業」として毎年申請、プレゼンし助成金を頂いてきました。この喜びを胸にこれからも児童作品展を中心に美育によるまちづくりを実行委員一同、心合わせて進めてまいります。
【団体賞コメント】このたびは、名誉ある賞を戴き深く感謝申し上げます。当展は、米子市、境港市他7町村の児童の参加を得て、本年で28回目を迎えます。米子高島屋を主会場に、8つの小学校、9つの医療機関、米子市役所、JR米子駅等での巡回展も実施し、「生きる力」を貰った等の反響を戴いています。また協賛金をはじめ、地元医学界の多大な協力、支援も特筆すべき点ですが、今後共、心身共に健康な人、家庭、まちづくりをめざして、一層努力してまいりたいと存じます。
絵画の部 総評
MOA美術館全国児童作品展は、今年で第30回を迎えました。絵画作品は、国内外から31万点余りもの出品があり、小学生の絵画作品展としては国内最大規模のコンクールになっています。
全国審査を何年かさせていただいていますが、近年、心に響く作品が多くなってきています。心に響く作品とは、表したいことが明確で、それを工夫しながら素直に表した作品です。今回、賞に入った作品を見ると、自分が表したいものや心に残ったものを、大きく描いたりたくさん描いたりした作品や、構図を工夫して印象が残るように独自の視点で表現した作品が多くありました。どれも自分の着眼点でとらえ、自分の表現方法で一生懸命描いている姿が伝わってくる作品でした。過去には、〇〇式描画方法のような決められた方法で描かれた作品が一部見られました。そのような作品は一見、子供らしい表現に見えますが、お決まりのパターンで描かれ、子供が感じ取ったり考えたりした形跡が見られない作品です。このような作品が少なくなってきた背景には、学校の先生方の意識の変化と地方審査の改善があるのではないかと思います。
学校教育の中で子供たちは、なぜ絵を描くのでしょうか。子供たち一人一人が感性を働かせて様々なことを感じ取りながら考え、自分なりに工夫し、表現していくことに意義があるのだと考えます。そのため審査に当たっては、絵と題名を見ながら、作者である児童が「何を感じて表現しようとしたのか。どのような工夫をしたのか。」をできるだけ丁寧に読み取ることを大切にしています。
近年、子供たちの自然体験や家族、地域での触れ合いの機会などが減少していると言われています。そうした中で、それらをテーマに絵を描くことは、体験したことをじっくりと振り返る時間になり、自然のよさや美しさ、不思議さ、家族や友達、地域の方との触れ合いや心の温かさなどを改めて実感する機会にもなります。そのような温かさや楽しさが伝わってくる作品に出合うことが、この作品展の審査の楽しみでもあります。
環太平洋大学 副学長 村上尚徳