現代の日本は、グローバル化、少子高齢化などによって多様な社会へと激しく変化しており、学校教育においても、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」をバランスよく育成することを通じて、これからの社会において「生きる力」をより一層育むことが重要になっています。
MOA美術館児童作品展は、「学習指導要領」にもとづき、子どもたちが自然・環境、社会、他者との関わりを通して、興味や関心をもったことを、感性を働かせながら絵画や書写によって表現することで情操を養い、豊かな心を育てることを目的に開催しています。
子どもたちの創作活動を奨励することは、夢や目標に向かって自ら考え、行動する力を高めると同時にそれぞれの国の伝統と文化への関心を高め国際文化交流に資するものと考えています。
本児童作品展は、全国の美育ボランティアによって支えられ、さまざまな個人、団体と協力しながら、医療福祉機関での巡回展示や、年間を通じた美育活動など、学校・家庭・地域が連携し、社会全体で子どもを育ていくことを重視するもので、このことによって、地域社会の絆を深め、心身ともに健康な活力のあるコミュニティづくりを願っています。
第32回となる今年度はコロナ禍の中で、海外7ヶ国14会場を含む238会場で開催し、応募総数165,061点、参加校数4,884校となりました。このたび、各会場の優秀作品から厳正な審査によって選出し、全国展を開催します。子どもたちの多様な個性・能力によって制作された創造性やチャレンジ精神あふれる作品を是非ご鑑賞ください。
本展の開催にあたり、ご協力賜りました関係各位に深く感謝を申し上げるとともに、今後も未来に羽ばたく子どもたちに夢と希望を与えられる児童作品展としてご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
MOA美術館
開催期間 | 展 示 2022年1月8日~2月16日 入賞入選300点と団体賞の展示紹介 於:円形ホール 表彰式 2022年1月31日 於:能楽堂 |
---|---|
主催 | 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団(MOA美術館) |
後援 |
文部科学省 外務省 厚生労働省 農林水産省 環境省 日本ユネスコ国内委員会 公益社団法人日本PTA全国協議会 公益社団法人全国子ども会連合会 公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 全国新聞社事業協議会 公益財団法人海外日系人協会 全国連合小学校長会 |
参加対象 | 海外7ヶ国14会場を含む238会場で開催.応募総数165,061点、参加校数4,884校 399点の中から入賞入選300点 |
審査員 |
絵画の部 小林 恭代 文部科学省教科調査官 谷山 和也 厚生労働省子ども家庭局子育て支援課児童環境づくり専門官 矢作 一也 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室利用推進・自然教育係長 岡田 京子 東京家政大学教授 村上 尚徳 環太平洋大学副学長 遠藤 友麗 元聖徳大学生涯学習課講師、MOA美術館児童作品展シニアアドバイザー 書写の部 豊口 和士 文部科学省教科調査官、文教大学教授 大塚健太郎 文部科学省教科調査官 谷山 和也 厚生労働省子ども家庭局子育て支援課児童環境づくり専門官 矢作 一也 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室利用推進・自然教育係長 長野 秀章 東京学芸大学名誉教授 加藤 泰弘 東京学芸大学教授 団体の部 豊口 和士 文部科学省教科調査官、文教大学教授 小林 恭代 文部科学省教科調査官 谷山 和也 厚生労働省子ども家庭局子育て支援課児童環境づくり専門官 長野 秀章 東京学芸大学名誉教授 加藤 泰弘 東京学芸大学教授 遠藤 友麗 元聖徳大学生涯学習課講師、MOA美術館児童作品展シニアアドバイザー 斎藤 泰彦 公益財団法人岡田茂吉美術文化財団代表理事 (順不同・敬称略) |
賞 |
絵画の部 文部科学大臣奨励賞 1年~6年各1点 6点 外務大臣賞 3点 厚生労働大臣賞 1点 農林水産大臣賞 1点 環境大臣賞 1点 日本PTA全国協議会会長賞 1点 全国子ども会連合会会長賞 1点 ボーイスカウト日本連盟理事長賞 1点 審査員賞 2点 金 賞 5点 銀 賞 18点 銅 賞 30点 入 選 150点 書写の部 文部科学大臣奨励賞 1年~6年各1点 6点 厚生労働大臣賞 1点 農林水産大臣賞 1点 環境大臣賞 1点 日本PTA全国協議会会長賞 1点 全国子ども会連合会会長賞 1点 ボーイスカウト日本連盟理事長賞 1点 審査員賞 1点 金 賞 2点 銀 賞 5点 銅 賞 10点 入 選 50点 団体の部 文部科学大臣賞学校奨励賞6校 厚生労働大臣賞2児童作品展実行委員会 |
受賞された皆さんと、出品されたすべての児童の皆さんのご努力を心より讃えます。
今年度、書写の部では、国内・海外を合わせ、計46,969点もの出品があり、その内容は例年にも増して素晴らしく、日頃の努力の成果が大いに発揮された作品ばかりでした。
日本には、日本独特の感性や価値観などに裏打ちされた、日本独自の伝統や文化が様々あります。文字を書くこともそれ自体が文化といえます。特に毛筆で文字を書くことについては、書かれた文字、文字を書く行為ともに日本の伝統的な文化であり、日本の伝統や文化全体をも支えながら継承されてきました。今回出品された皆さんは、書写の学習を通して、文字を書くことの文化としての意味や価値、毛筆によって書かれた文字の力や魅力、美を感じ取っていることでしょう。文字を書くことは、考えや情報を記録したり、他者へ適切に伝えたりするだけでなく、より効果的に、より豊かに伝えることができ、また、文字を書くことにより自身と向き合うこともできます。皆さんには、今後も日常生活の中で文字を書くことを大切にし、心豊かな生活を創造していってほしいと願っています。
審査に当たっては、筆使いや運筆、字形や字配り、紙面構成や作品としてのまとまりなどの他、こうした姿勢や思いもまた重要な観点となります。書写の学習を通して、皆さんなりに日本の文化と向き合いながら、文字や言葉を書くこと、文字や言葉で伝えることの意味や大切さを感じ取る感性を高めていってください。そして、書写の学習を通して、たくさんのことを考え、色々なことを学んでもらえたら嬉しく思います。
文部科学省教科調査官 文教大学教授 豊口 和士
早坂 康
【学校コメント】本校は、北海道北西部の留萌市に位置し、日本海の荒波と黄金色の夕日に代表される、豊かな自然に囲まれた学校です。今回の栄えある受賞は、子どもたちや教職員に大きな喜びとともに、今後の活動への大きな励みをいただきました。これからも、豊かな自然環境を生かし、「今の笑顔を未来につなぐ東光小」を目指し、努力して参りたいと思います。
【委員会コメント】この度は、留萌会場を代表してこのような素晴らしい賞を受賞されましたこと、当実行委員一同も共に歓びを共有させていただいています。長年に渉り当作品展に多大なるご協力をいただくだけにとどまらず、貴校と連携を持ちながら、花の授業など情操教育、児童の健全育成を願った取り組みを、共に積み重ねて参ることが出来た成果と心より感謝しています。
横須賀 邦子
【学校コメント】63年目を迎えた本校の校庭には、五輪のマークのある五輪山があります。児童と共に二回目の東京オリンピックを観戦し、日々楽しく活動しています。この度の栄えある受賞は、児童や教職員だけでなく地域にとっても大きな喜びです。今後も、教育目標「なぜだろう これでよいのか さあやるぞ」に向かい、一層努力して参ります。
【委員会コメント】 この度、行政、学校、保護者、地域の皆様の温かい御協力のもと作品展が開催されました中、第1回より審査の御協力、お茶、お花のクラブの授業等、情報教育に取り組んで頂いて参りました北小学校が学校奨励賞に選ばれたこと、御協力を頂いた方々も大変お喜び頂きました。今後も皆様と共に力を尽くして参りたいと存じます。
寉田 晃子
【学校コメント】本校は、神奈川県の中央部に位置し、市役所通りにある全校児童700名の学校です。今回、この栄えある賞をいただき、これまで支えてくださった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。今後も「自ら学びたくましく生きる心豊かな児童の育成」を目指し、児童の豊かな感性や表現活動の育成になお一層努力してまいります。
【委員会コメント】この度は、市教委はもとより、学校長を筆頭に教職員の皆様、実行委員共に感激しております。4月に開催を決定し、準備を進める中、過去最高の応募数があり、市の協力を得てマスコット「ざまりん」メダル(金銀銅)の提供を受け、子ども達にも喜びを届けられました。今後も、子ども達の健全な成長を願い、共に歩んでまいります。
渡邊 衛
【学校コメント】本校は、静岡県の東部に位置し、季節ごといろいろな表情をした富士山を眺めることができるなど、豊かな自然に囲まれています。また、令和3年度には、創立148年を迎えた伝統ある学校でもあります。今回、この栄えある賞をいただき、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。この賞を励みに、「主体的に学び ともに 目標や夢に向かう子」の育成を目指して、これからも一層努力してまいります。
【委員会コメント】この度、函南小学校が栄えある「学校奨励賞」を受賞できましたことは、学校関係者はもとより、地域にとって大きな喜びであり、実行委員会にも励みになります。長年に亘り地域担当で続けている同校へのお花の生けこみについて、コロナ禍であっても「こんなときだからこそやってほしい」と積極的に受け入れてくださるなど美育に対する姿勢に感銘を受けております。ご支援、ご協力賜りました関係各位に感謝申し上げ、今後とも、学校や家庭、地域と一体となって”子どもたちの健全な成長”と”心身ともに健康なまちづくり”を願い一層努力してまいります。
笠川 智香
【学校コメント】本校は、古くは繊維産業が盛んで地車祭りでも有名な岸和田市の東部に位置し、令和5年には創立150周年を迎える全校720名の学校です。「心豊かにたくましく育ってほしい」、その思いは脈々と地域の中で受け継がれています。栄えある受賞をいただき、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。今後も、子どもたちとともに心温まる教育活動をすすめてまいります。
【委員会コメント】「光明小学校が学校奨励賞に決定」との通知に、実行委員会では喜びの言葉、喜びの涙があふれました。コロナ禍に展示を断念、けれども子どもたちの素晴らしい作品を皆さまにお伝えするとともに、記録に残したいと作品集を制作しました。作品集が子どもたちやご指導いただいた先生方に感謝の気持ちとして伝われば幸せです。
中村 彰男
【学校コメント】本校は、大阪府南部に位置し、今年度で創立113年を迎える、児童数741名の学校です。今回の栄えある受賞は、学校、保護者、地域にとってもたいへん大きな喜びであり、関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。この賞を励みに、今後も、家庭や地域との連携を大切にしながら、心豊かな児童の育成にとりくんでまいります。
【委員会コメント】昨年はコロナの影響で開催中止となりましたが、今年は開催できた喜びと「学校奨励賞」をいただいた喜びで感動しております。また、貝塚出身で小学生時代「文部科学大臣賞」を受賞された小園健太さんが、今年のプロ野球ドラフト会議でDeNAベイスターズから1位指名され、児童の憧れの的になっており、うれしい二重の喜びです。貝塚市は理解ある議員を実行委員長として貝塚子育てネットワークの会、NPO法人えーるの協力で市内全小学校から毎年出展されています。これからも美育を通し、行政と協力して心身ともに健康なまちづくりに努力してまいります。
【団体賞コメント】この度は名誉ある賞をいただき、実行委員会一同心より感謝申し上げます。当委員会は今年の大河ドラマの舞台の一部になっている静岡県伊豆の国市全ての小学校(6校)と特別支援学校からの参加を得て開催しています。実施にあたって、伊豆の国市に合併した平成17年から教育委員会との共催で実施させていただいています。また、市内の企業や団体をはじめ、多くの市民の方々からの協賛をいただき、さらには、28年間継続して取り組んでいるお花の子ども山月に来ている子どもたちや保護者の方々、そしてOBやOGの学生を含めた90名ほどのボランティアによって支えられています。そして、児童作品展がまちづくりの一助となることを願い、5年前からは市内の2病院で入賞作品の展示を行い、病院関係者をはじめ患者様、お見舞いに来られた方々から好評をいただいています。この度の受賞の喜びを力にして、地域の方々と力を合わせ、「美」による情操教育の実践を通した子どもたちの健やかな成長とまちづくりに、より一層取り組んでまいります。
【団体賞コメント】この度は名誉ある賞をいただき、関係者一同心より感謝申し上げます。古賀市は福岡市と北九州市の間に位置する都市近郊で、海、山、川の自然に恵まれ、農工商の産業が息づいています。未来をになう子どもたちを大切にし、高齢者のための医療・介護連携や自治会単位での健康づくりなども進めているまちです。本会場は、「絵画で古賀を元気に!」との願いで、2014年より古賀市として独立開催するようになり、当初より古賀市全校(8校)から参加いただいています。家庭、学校、地域、そして行政との協動により、また多くの企業・団体からご協賛をいただき、ボランティアの方々と共に子どもたちの健全な育成を願い積み重ねてまいりました。この作品がイオンモールのメイン展示の他、年間を通して古賀駅美術館をはじめ医療・介護施設等15ヶ所の展示によって市民や患者さんの癒しになっているとのご報告をいただいています。このような子どもたちへの支援が、子どもたち自身の「生きる力」を育み、「誰かの光」にもなっていることを感じとることができ、今後の生き方により良い影響を与えられることを願っています。今回の受賞を励みに、これからも美育を通して可能性に満ちた子どもたちの成長と、健康なまちづくりにつながるように一層努力してまいります。※本年はコロナ感染予防対策の点から、主たる展示場所をHP上に変更しております。http://art-friend.blog.jp/
絵画の部 総評
第32回MOA美術館全国児童作品展には、国内外から約11万5千点もの絵画作品が出品されました。コロナ禍で学校の教育活動が制約される中で、多くの子供たちが絵を描き、出品してくれたことを大変うれしく、また、たのもしく感じます。
MOA美術館全国児童作品展は、子供たち一人一人が感性などを働かせて様々なことを感じ取りながら考え、自分なりに工夫し、表現することを重視しています。そのため審査に当たっては、絵と題名を見ながら、作者である子供たちが「何を感じて表現しようとしたのか。どのような工夫をしたのか。」をできるだけ丁寧に読み取ることを大切にしています。近年、子供たちの自然体験や家族、地域での触れ合いの機会などが減少していると言われています。そうした中で、それらをテーマに絵を描くことは、体験したことをじっくりと振り返る時間になり、自然のよさや美しさ、不思議さ、家族や友達、地域の方との触れ合いや心の温かさなどを改めて実感する機会にもなります。このように子供たちが、絵を描くプロセスを通して、普段とは違った視点から生活や身の回りのものを見直したり、様々なことに気付いたり、考えたり、自分のことを振り返ったりすることが大切だと思います。
心に響く作品とは、表したいことが明確で、それを工夫しながら素直に表した作品です。今回、賞に入った作品を見ると、自分が表したいものや心に残ったものを、大きく描いたりたくさん描いたりした作品や、構図を工夫して印象が残るように独自の視点で表現した作品が多くありました。どれも自分の着眼点でとらえ、自分の表現方法で一生懸命書いている姿が伝わってくる作品でした。
今後とも、このコンクールが、子供たちの感性や創造性、豊かな情操などを育むことつながってくれることを願い、審査講評とさせていただきます。
環太平洋大学副学長 村上尚徳